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日本一短いレミゼラブルのあらすじ:これを読んで物語を楽しもう

小説

ミュージカルや映画でお馴染みの『レ・ミゼラブル』は、19世紀フランスを舞台に繰り広げられる壮大な物語です。

本記事では、大学でレ・ミゼラブルの研究をしていた筆者が、ミュージカル版のあらすじ出来る限り短く簡単に解説した後、小説版の内容を掘り下げて解説していきます。

  • レ・ミゼラブルの内容を簡単に知りたい!
  • レ・ミゼラブルの物語をより深く理解したい!
  • これからレ・ミゼラブルの小説も読んでみたい!

という方はぜひご覧ください!

※この記事には上記作品のネタバレが含まれます!ネタバレしてもいいよ、という方のみご覧ください。

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『レ・ミゼラブル』とは『惨めな人々』の物語

『レ・ミゼラブル』は、フランス語直訳でLes Misérables=『惨めな人々』という意味です。

中心人物はジャン・バルジャンという中年の男ですが、惨めな人々というタイトルの通り、この物語に登場する人物全員が主人公といって良いでしょう。

舞台は19世紀前半のフランスです。

ナポレオン戦争後から七月革命までの時代を背景に、貧困や不平等革命の理想と現実を鮮明に描いています。

『レ・ミゼラブル』のストーリーを簡単に説明すると、激動の19世紀を懸命に生きたフランス市民をリアルに描いた物語です。

『レ・ミゼラブル』の作者はヴィクトル・ユーゴー

作者はフランス文学の巨匠、ヴィクトル・ユーゴー

代表作『レ・ミゼラブル』の他、ディズニー作品『ノートルダムの鐘』の原案となった、『ノートルダム・ド・パリ』があります。

登場人物のほとんどが報われないことがポイント

『惨めな人々』という題名の通り、ほとんどの登場人物に救いが無いことが、本作を理解する上で重要になります。

人々の不遇をリアルに描写することで、当時のフランス政治への批判や人々が無知であることへの警鐘を鳴らしているのです。

それでは、あらすじを出来る限り短く簡単に解説していきます!

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ミュージカル版『レ・ミゼラブル』のあらすじを簡単に解説

ジャン・バルジャンの更生

ジャン・バルジャンパンを盗んだ罪で19年間服役し、出所後も社会から冷遇されますが、ミリエル司教の善意に触れ改心します。

更生したジャン・バルジャンはマドレーヌと名前を変え、町の市長となり成功を収めますが、過去の罪を追及する警部ジャベールに追われ続けます。

ファンティーヌの没落

美しい女性ファンティーヌは、娘のコゼットを養うためにマドレーヌ市長(ジャン・バルジャン)の工場で働く女性ですが、同僚の嫌がらせに遭い仕事を失ってしまいます。

困窮したファンティーヌは娼婦にまで身を落とし、病を患ってしまいます。死の間際にジャン・バルジャンに助けられ、娘コゼットを彼に託しました。

ファンティーヌによって、ジャン・バルジャンに「コゼットを幸せにする」という新たな使命が与えられました。

コゼットとマリウスの恋

ジャン・バルジャンに引き取られたコゼットは成長し、美しい女性に育ちます。

パリの街中で学生マリウスを見かけ、互いに恋に落ちます。

しかしマリウスは、貧しい市民を救うために、友人のアンジョルラスらと共に革命活動に参加していました。

革命かコゼットか、どちらを取るか悩む中、ジャン・バルジャンはジャベール警部から逃れるためイギリスへ旅立つ準備をします。

コゼットはマリウスへ別れの手紙を書きますが、マリウスはコゼットへ「革命から生き延びて、君の元へ行く」と返事しました。

その手紙によって、ジャン・バルジャンはマリウスの存在を知り、娘を託す男性が現れたことを悟ります。

若者たちのパリ蜂起

マリウスと彼の仲間たちは政府に反発してパリ蜂起を計画しますが、失敗に終わります。

仲間のほとんどが政府の弾圧によって亡くなる中、マリウスは一命を取り留めます。

マリウスを救うためにこっそり革命活動についてきたジャン・バルジャンは、マリウスを背負って安全な場所に連れて行きます。

ジャベール警部の苦悩

ジャン・バルジャンは、マリウスを安全な場所に連れて行く途中、ジャベール警部に見つかってしまいます。

ジャベール警部は彼らを逮捕しようとしましたが、ジャン・バルジャンが本当に悪人なのか悩んだ末、結果的に彼らを逃します。

その後、ジャベール警部は正義とは何なのか苦悩した挙句、セーヌ川に身を投げて自ら命を絶ちました。

ジャン・バルジャンの旅立ちとクライマックス

ジャン・バルジャンは、コゼットとマリウスの結婚を見届けた後、2人の前から静かに立ち去ります。

しかし、天に召される直前に、マリウスの手引きによってコゼットと会うことができました。

ファンティーヌ、ミリエル司教の導きにより、静かに世を去ります。

ラストシーンでは、激動の時代を必死に生きた人々は、たとえこの世を去っても輝き続けることを象徴するかのように、盛大な音楽と彼らの歌声が鳴り響きます。

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小説版『レ・ミゼラブル』の解説と考察

原作の小説『レ・ミゼラブル』はフランスの歴史をより詳しく紐解く、約2000ページに渡る壮大な物語となっています。

ミュージカル版では盛大な音楽が印象的ですが、小説ではより人々の不遇や鬱々とした雰囲気が描かれています。

読んでいるとあまりのギャップに驚く方もいるかもしれません。

ミュージカル版を見ただけではよく分からなかった部分を抜き出して解説したいと思います!

ジャン・バルジャンはなぜパンを盗んだだけで19年投獄されていたの?

幼い頃に両親を亡くしたジャン・バルジャンは、家族を飢えから救うために、パンを盗むという犯罪を犯してしまいました。

当初、彼には5年の刑が課されていましたが、4度の脱獄を試みたことで刑期が延び、最終的には19年もの長い刑務所生活を送ることになったのです。

ジャン・ヴァルジャンはトゥーロンの徒刑場で四度脱走を試みたがいずれも失敗し、刑を加重されて、十九年の間、徒刑場につながれた。ガラスを割ってパンを一つ盗んだためにである。

文藝春秋、鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景』

当時のフランスでは実際に貧富の差が激しく広がり、深刻な貧困が社会に蔓延していました。

ジャン・バルジャンがこうした過酷な環境に置かれたことには、当時のフランス社会体制への痛烈な批判が込められています。

ファンティーヌは何故あそこまで落ちぶれたの?父親は誰?

コゼットの父親である、ファンティーヌの恋人はフェリックス・トロミエスといいます。

2人は結婚していないので、ファンティーヌの夫ではありません。

フェリックス・トロミエスは由緒ある家柄の学生ですが、ファンティーヌのことは完全に遊びで、子供が出来たと告げる前にあっさり捨てられてしまいました。

フェリックス・トロミエスもそんな学生の一人で、ファンチーヌという名の女工を恋人にしていた。彼の三人の友人にもそれぞれ女工の恋人がいた。ある夏の一日、四組のカップルは、サン=クルーへピクニックに出かけた。夢のように楽しい一日を過ごしたあと、彼らはシャン=ゼリゼのカフェに入った。四人の学生は「きみたちをびっくりさせるものがある」といってカフェを出ていった。ボーイが託された手紙を持ってきた。それには、彼らが彼女たちを捨てて親もとに帰ることが書かれていた。一時間後、自分の部屋に戻ったファンチーヌはさめざめと泣いた。彼女は妊娠していたのだ。

文藝春秋、鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景』

ファンティーヌはパリに出稼ぎに来ていたほどお金が無かったため、フェリックス・トロミエスと一緒にいる間は彼に養ってもらっていました。

捨てられてからは、娘コゼットを養う為に1人で働き口を探す他ありませんでした。

トロミエスに捨てられた後、ファンチーヌは孤独のうちに女の子を出産した。代書屋にたのんで、トロミエスにニ、三度手紙を出したが返事はなかった。やがて金に困ったので持ち物を全部売り払った。それでも借金を返すと八十フラン(8万円)しか残らなかった。パリでは仕事がなかったので故郷のモントルイユ=シュル=メールに戻ることに決め、二十二歳のある朝、二歳のコゼットを背負って徒歩でパリを離れた。

文藝春秋、鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景』

運よくジャン・バルジャンが経営する工場に就職しましたが、子どもの存在が周囲にバレて嫌がらせに遭い、工場を解雇されます。

窮乏する女性が娼婦に堕ちることは、昔のみならず現代でも起こっているため、決して他人事とは言えない問題ですね。

ジャン・バルジャンはなぜお金持ちになって市長になれたの?

ジャン・バルジャンは、服役中に読み書きと計算を覚えたことが小説で明かされています。

服役中に習った読み書きと計算も彼を改心させることはなかった。刑期を終えて出獄したとき、ジャン・ヴァルジャンは社会と人間に対して深い憎しみを抱くようになっていた。十九年の間、彼は一適も涙をこぼしたことがなかった。

文藝春秋、鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景』

19世紀当時のフランスの識字率は男性で47%、女性で27%程度でした。

そのほとんどが上流階級の人間なので、一般市民の識字率は非常に低かったと言えるでしょう。

三年ほど前、どこからともなくやってきた一人の男が数百フランの金を元手に始めた黒玉ガラスの製造が大当たりして町全体を潤していたのである。マドレーヌと名乗るその男は、男女別に工場を建てて風紀をただし、誠実さだけを条件にすべての者を雇い入れた。彼はもちろん大きな財産を築いたが、それ以上に町の福祉に気を配り、私財をなげうって病院と学校と保育園をつくった。はじめ、よそ者をうさん臭い目で見ていた町の人々も次第に警戒心を解き、やがてマドレーヌ氏は市長に任命された。

文藝春秋、鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景』

ジャン・バルジャンは、ミリエル司教から銀の食器を譲り受け、それらを売ったお金がありました。

その資金で安価な黒玉ガラスの製造方法を考案し、大成功を収めたことで、彼は一財産を築くことができたのです。

ジャン・バルジャンは、その富を町の人々の福祉に役立てました。彼のことをよそ者として怪んでいた町の人々も、次第に彼を信頼するようになり、ついに市長になることを勧めます。

ジャン・バルジャンは最初はその提案を断っていたものの、最終的には市長の職を受け入れました。

マリウスたちはなぜ学生運動を起こしたの?

物語のクライマックスである、マリウス、アンジョルラスらABC秘密結社が起こす学生運動は、実際にパリで起こった「六月暴動」が背景になっています。

六月暴動(1832年6月5日-6月6日)は、七月革命に対する大規模な反政府暴動でした。

1830年の七月革命でルイ・フィリップ1世新国王に即位しましたが、多くの市民はこの新政権に失望しました。

民主主義を掲げていたものの、実際には裕福なブルジョワ層が権力を握り、労働者や貧困層の声は無視され続け、社会的な格差が深刻化したからです。

自由や平等の理想が裏切られたと感じる人々が増え、労働者や貧困層の支持が厚かったラマルク将軍の葬儀が引き金となり六月暴動が発生しました。

市民がバリケードを築き政府軍と衝突しましたが、暴動は政府軍によって鎮圧され、政府側・市民側両方に数百名の犠牲者が出ました。

政府側は73名の死者と344名の負傷者、労働者側の犠牲者は死者93名負傷者291名

Dictionnaire de la conversation et de la lecture, Tome XI, p.702.
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『レ・ミゼラブル』は結局何が言いたかったのか

『レ・ミゼラブル』は、個人と社会、愛と犠牲、自由と抑圧など、多くのテーマを扱いながら、19世紀フランスの社会状況を描き出し、人間の尊厳と社会正義を強く訴えています。

ヴィクトル・ユーゴーはこの作品を通じて、社会の不平等を糾弾し、同時に人間の可能性や再生の力を描くことで、「どんなに困難な状況にあっても、愛のために生き抜く」ことの尊さを描いています。

『レ・ミゼラブル』が時代を越えて愛される理由は、当時の人々の葛藤や想いが共感を生むからかもしれませんね。

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まとめ

『レ・ミゼラブル』は、19世紀フランスの歴史背景を反映した壮大な物語であり、社会的な不平等や人々の苦悩を鮮やかに描いています。

この記事が、小説やミュージカル版『レ・ミゼラブル』を楽しむ際に、少しでも参考になれば嬉しいです!

最後までご覧いただきありがとうございました。

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